先日のハロウィーンに、客が囚人という設定で監獄の中でご飯を楽しむテーマレストラン「監獄レストラン ザ・ロックアップ」で、タレントの戦慄かなのさんが1日看守長を務めるコラボレーションが実施されました。
戦慄かなの――アイドルとして活躍する傍ら、児童虐待や育児放棄をなくすために設立したNPO法人「bae」の代表理事を務めるなど、特異な活動が世の耳目を集める21歳。その経歴も異色で、特に「少年院上がり」というフレーズは代名詞のようにメディアに使われることがあります。
そうした経歴を持つが故に、存在自体が危険なものと解釈されやすいですが、ハロウィーン当日は、「ザ・ロックアップTOKYO」の1日看守長として接客し、翌日には「お化けやゾンビたちの夜遊びによって汚された新宿の街を綺麗にするべく」朝からごみ拾いを行った戦慄さん。その姿を見ると、上記のような解釈が近視眼的だと感じさせます。
果たして、戦慄かなのとはどういった人物なのか。「少年院上がり」という肩書との共存や、「虐待されている子どもたちを手助けできるような環境を作りたい」という将来の夢などについて聞きました。
―― 「ザ・ロックアップTOKYO」の1日看守長、そしてハロウィーン翌日のごみ拾いイベント、おつかれさまでした。一連のイベントでは、どんな“受刑者”の方がいらっしゃいましたか。
戦慄かなの(以下、かなの) ファンの方が多かったんですけど、本当に甘やかされているなと感じます。私って世間的に“怖い”イメージがあると思うんですが、ファンの皆さんはそれは完全に外面の私で、本当は弱いのを分かってくれているので、どんなに毒づいても、「あいつまた強がり言っているよ……」と思ってくれるので(笑)。
あと、ハロウィーンだからと、私のコスプレをしてきてくれた女の子もいたんですけど、やっぱり女の子の方が過激というか熱狂的なファンが多い印象です。男性は、“ガチ恋”って言ってくれている人もいますが、アイドルオタク歴の長い人が行き着くことが多いです。「私みたいな子がいなかったから」「かわいいだけじゃないから」って言って。
―― かなのさんみたいな子がいない――というのは、やっぱり「少年院上がり」というキャッチフレーズで世の中に出たから、ですよね。
かなの そうですね。でも、私は少し有名になれた今でも、“少年院上がり”が芸能活動、アイドル活動をする上でプラスになるなんて1ミリも思っていないんです。むしろマイナスとさえ思っています。
事実として“少年院上がり”という過去があるだけで、それで売り出してほしいと思ったことは一度もないです。自分に合うコンセプトの芸能オーディション(ミスiD)を見つけて、そのオーディションの最終面接で空白の2年について聞かれたから話しただけなので。
―― 今回のインタビューにあたりいろいろ調べましたが、かなのさんは自分から“少年院上がり”であることを積極的に話したことは実はないんですよね。でも、部分だけを切り取ってたたく人もいますよね。
かなの そうですね。でも、私をたたく人……アンチって、ニュースの見出しだけを見て言っているケースが多いので、そこはもう気にしないようにしています。私という商品があって、一度は手に取ってくれて、自分で何かを発言したいと思ってくれたことは事実ですので、「まいどあり!」と思えるようになりました。
アンチも多いでしょうけど、ファンもフォロワーもちゃんといるから、それでいいんじゃないかなって。ちゃんと見てくれる人だけを大切にしていきたいです。
ぶっちゃけ、芸能活動にもアイドル活動にも“少年院上がり”はマイナスの経歴。でも、唯一プラスになるとしたら、いま虐待されている子どもたちに自分たちの境遇を考えてもらえるきっかけになることだと思います。
―― 「自分たちの境遇を考えてもらえる」というのは具体的には?
かなの 私自身、自分が親から虐待されているなんて全く思っていなかったんです。少年院に入っていろいろなことを知っていく中で初めて気付いたけれど、それまでは自分は母親にすごく愛されていて、殴られるのは私が悪いからだと思っていたんです。
だって、ニュースで見る虐待って本当にひどくて、愛があるなんてとても思えないじゃないですか。でも、うちは他の家の子どもよりもスキンシップがあって、私が中学校に入るまで当たり前にキスもハグもあったので気付けなかったんです。
でも、本当は殴られるのもご飯をくれないのも、虐待だった。だから、私がいろんなメディアで自分の過去を話すことで、私みたいに虐待されているのに気付けていない子どもたちに気付いてもらえる、というのは意味があると思っています。
―― 話は戻りますが、今回の「ザ・ロックアップTOKYO」コラボイベントのコメントに「いつもお世話になっている街なので今日くらいは何か役に立ちたいです」がありました。かなのさんが新宿という街にどうお世話になっているか、何度も掘り返すようで恐縮ですが、少年院に入る前と後でお聞きしたいです。
かなの 入る前は、稼ぐために危ない仕事をするなら取りあえず新宿に行けばどうにかなるだろう、と思っていましたね。「何かが変わるかも」という憧れもありましたし。
いまでいうと、すごく落ち着く場所です。渋谷はうるさくて落ち着かない。あと、渋谷はテレビを見たパリピにウザ絡みをされますね(笑)。新宿って、みんな自分のやることが決まっていて、それに集中しているから、他人には関心がないんですよ。それが落ち着きます。多分この先もずっとお世話になるんじゃないかな。
―― この先、ということで、かなのさんの将来の夢についてもお聞きしたいです。現在は大学で法律を学ばれたり、NPOを立ち上げたりと、それこそ“少年院上がり”でデビューした方とはイメージが全く違うのですが、何を目指されているのでしょうか。
かなの いまはアイドルにしてもNPOにしても夢半ば、という感じですから、どれもちゃんとやれたらいいな、と思っています。特に、NPOは長い人生でちゃんとやりたい夢ですね。
もともと、「ミスiD」を受ける前は、少年院の先生になりたいという夢がありましたが、いまは虐待されている子どもたちを直接手助けできるような環境を作りたいと思っています。虐待されて非行に走ってしまい、少年院に入った子どもたちも多くいるのですが、少年院を出てから生きるのってすごく大変。もちろん、自分の責任だと突き放してしまえばそれまでですが、それだと負が連鎖しちゃうんです。
私も少年院を出た後、社会のあまりの大きさとやることの多さに疲れてしまったんですが、同じように何から始めたらいいか分からない、どうしようって思っているうちに女の子だったら水商売に流れてしまうことも多くて。だから、出る前にある程度やることを決めてあげられる環境を作れたらいいなと思っています。
そうじゃなければ、いくら少年院で更生しても、また同じこと……むしろもっとヤバい事件を起こすかもしれないじゃないですか。
―― 更生、という言葉が出てきましたが、戦慄かなのさんは“更生”についてどう思っていますか。
かなの さっきの話じゃないですが、私がいまこうやって生きているのを見て「更生してないだろ」というアンチもいるんです。でも、みんなのいう“更生”というのがテレビに出ないことだったり、テレビで笑っちゃいけないことだったりするのなら、私は別に更生していなくてもいいと思っています。
もちろん、自分の中では更生したつもりです。私にめちゃくちゃモラルがあるとか、言葉遣いがきれいとか、そういうのは残念ながらないんですが……(笑)。
1つ言えることは、私を当時見てくれていた少年院の先生たちは、きっといまの私を見て喜んでくれると思うんです。それがあればアンチにいくら「お前は更生していない」と言われてもいいんじゃないかなって。少年院の先生たちが喜んでくれて、当時の私だったり、周りの子だったり、いま少年院にいる子どもたちから見てお手本になれていたらそれでいいです。彼らに恥ずかしくない生き方ができているのが、私の更生できている証だと思いますから。
―― 他に将来の夢はありますか。例えば、ご家族のことでも。
かなの 母娘関係はトラウマではありますが、私はもう乗り越えられたので、いまはお母さんとはうまくやっていきたいと本当に思います。お母さんも虐待されて育ってきたので、きっと分からなかったんですよね。だから、全部チャラにする、じゃないですけど、将来的にはお母さんに楽をさせてあげられたらとも思っています。気負わずにうまくやっていけたらいいな、という感じですね。
―― アイドル、NPO、そしてお母様とのご関係、全てうまくいくことを応援しています! それでは最後に一言お願いします。
かなの イメージはすごく強いと思うんですが、私は決して強いわけでも怖いわけでもなく、いまは将来の夢のために頑張っている一人の人間です。
その夢の1つであるアイドルは、本当に楽しくて。昔はみんなの前に出るなんて絶対考えられなかったのに、最近だとライブ中に別の人間じゃないか? って思うほどハイテンションなんですよね。自分が自分じゃないみたい。だからいまはライブを頑張ろうと思っているので、ライブに遊びにきてくださーい!
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