芸人が会社を通さず、反社会的勢力が関わるパーティーなどに出席する「闇営業」の問題が波紋を広げている。芸能人らは反社会的勢力の力の誇示などに利用されやすいとされ、相手側が身分を隠して接触してくるケースも多い半面、スマートフォンなどの普及で付き合いの「証拠」は表に出やすくなっている。専門家は「より一層、慎重な対応が求められる時代になっている」と指摘する。
発端は約5年前にさかのぼる。吉本興業のお笑いコンビ「カラテカ」の入江慎也さん(42)が振り込め詐欺グループの会合に芸人を仲介していたことが今月、写真週刊誌の報道で明らかになったことだった。
入江さんは解雇され、参加した11人も謹慎処分に。当初は否定した金銭の授受もあったとされる。さらに、「スリムクラブ」らも闇営業で暴力団関係者の会合に出席していたことが判明するなど、余波は広がっている。
なぜ、芸人の間で闇営業が横行するのか。専門家は芸人の不安定な立場も影響しているとみている。
闇営業は会社を介さず報酬が得られる「実入りがいい仕事」とされ、こうした営業で収入を確保しようとする意図もあったとみられる。吉本興業には約6千人が所属するが、会社を通じた仕事だけで生計を立てているのは一部という。
同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)は「若手からは『バイトをしても食べていけない』と聞く。今後も芋づる式に露見する可能性はある」と指摘。芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」共同代表理事の佐藤大和弁護士も「闇営業をしなければ最低限の生活もできないほど多くの芸人が不安定な立場に置かれていることが最大の問題だ」と訴える。
闇営業自体は違法ではないとされるが、対価を申告しないと脱税などの税法上の問題に発展する可能性もある。吉本興業によると、所属タレントは個人事業主であり、年間の収支や税額を個々に確定申告する必要がある。税理士でもある立正大の浦野広明客員教授(税法学)は「申告漏れがあったとすれば通常の所得税に加え、過少申告加算税などが追徴課税される恐れがある」と説明する。
さらに、闇営業は、今回のように反社会的勢力の介在の危険もはらんでいる。
芸能関係者によると、インターネットの普及で発信手段が多様化したことから、興行に伴う芸能界と暴力団ら反社会勢力との古くからの関係は希薄になっているという。ただ、反社会的勢力は自らの立場を誇示するために著名人らに接近。高額な報酬をちらつかせ、会合や宴席に呼ぶケースが増えているとされる。
関係者によると、暴力団と個人をつなぐブローカー的な存在も確認されており、「事前に出席者の素性を把握することは難しい側面もある」という。さらに、高額報酬の仕事に芸人側が飛びつき、現場で「怪しい」と感じても断りづらい状況に陥る場合もある。
捜査関係者は「正規の営業では芸能事務所がフィルターの役割を果たすが、個人が判断するのは容易ではない。甘い話には飛びつかず、慎重に行動すべきだ」と話す。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190628-00000622-san-ent
2019-06-28 11:58:00Z
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